研究概要 |
1.タモキシフェンの特異作用 生後7日以内にタモキシフェンを投与すると雌性生殖器管の異常が誘起された.雄では生後3日以内にタモキシフェンを投与した時のみ精子形成の抑制,貯精嚢の発達不全が誘起された.雄マウスの陰茎の前部にはI型コラ-ゲンをもつ繊維軟骨が,中後部には膜骨とII型コラ-ゲンをもつガラス軟骨がある.生後5日以内にタモキシフェンを投与すると,繊維軟骨の形成が抑制され,膜骨,ガラス軟骨の発達も抑制された. 2.骨盤の性的二型 マウスの骨盤の雌雄差は30日以後に顕著になる.また,精巣摘出により雌型になること,テストテロン投与により雌型から雄型になることを明らかにした.さらに,タモキシフェンを添加した培養液で骨盤を培養した結果,タモキシフェンは骨盤に対して直接作用して硬骨化を抑制することを明らかにした. 3.多卵性ろ胞 出生直後のエストロゲン(DES)により誘導された多卵性ろ胞は生殖腺刺激ホルモン(hCG,PMSG)に反応して排卵される.人工受精を行なった結果,DESを投与されたマウスの単卵性ろ胞から採取した卵と,正常マウスのろ胞から採取した卵の間には受精率に差がなかった.しかし,DESマウスの多卵性ろ胞から得られた卵の受精率は対照に比べて有意に低かったことから,胎児期にDESを投与された婦人の受精能が低いのは,卵に問題があるのではなく,子宮,輸卵管に問題があることが示唆される. 4.癌と血糖量に関する研究 乳癌になったマウスの血糖は,対照群に比べて有意に高いこと,自然発生乳癌,移植乳癌の大きさと血糖量には正の相関があること,さらに,坦癌動物の肝臓は対照に比べて有意に重いことを見いだした.マウスの肺癌細胞の移植によっても血糖が有意に上昇することを見い出した.
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