平成2年度の研究計画であるインサイチュ・ハイブリダイゼイション法によるギャップ結合のチャネル蛋白の遣伝子発現機構に関し、次の結果が得られた。 (1)ラットの肝細胞のギャップ結合蛋白であるコネクソン32のmRNAに対する相補性DNA(cDNA、ハ-バド大学Goodenough教授提供)からマルチプライム法で放射性DNAプロ-ブ( ^<35>SーCTPと ^<35>SーATPでラベルした)を得た。これを新生ラットの脳組織のクリオスタット切片とハイブリダイズさせると、特異的なオ-トラヂオグラフィ-のシグナルが脳組織に発現した。即ち、シグナルは大脳皮質、海馬、線条体、視床下部や上衣細胞層などのニュ-ロン、グリア及び上衣細胞に特異的に認められ、神経綱にはシグナルが殆ど認められなかった。この結果から、新生ラットの脳組織のニュ-ロン、グリア及び上衣細胞はギャップ結合蛋白のmRNAを発現していると考えられる。脳組織のパラフィン切片ではハイブリダイゼイションのシグナルがクリオスタット切片に比べて著しく減少することから、パラフィン包埋の過程でギャップ結合蛋白のmRNA活性が著しく低下することも判明した。 (2)コネクシン32に対するポリクロ-ナル抗体を用いて新生ラット脳の海馬を免疫蛍光組織化学的に検索したところ、海馬の錐体細胞層のニュ-ロンの周りにコネクシン32免疫陽性反応物が認められた。また、この部位を電子顕微鏡で調べたところ、互いに隣接する2個のニュ-ロ間にギャップ結合の存在することが確認された。免疫組織化学的方法でギャップ結合蛋白の存在すること、電子顕微鏡観察でギャップ結合の存在することが示されたことは、インサイチュ・ハイブリダイゼイション法による海馬でのギャップ結合蛋白のmRNAの発現を強く支持していることが判った。
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