質量分析計の高真空排気ポンプを従来用いていたイオンポンプからノ-ブルポンプに交換した。イオンポンプを使用時には時折、一度排気したArがイオンポンプから再放出されることがあり、Arのバックグラウンドが下がらない原因の一つになっていたが、これが解決した。 また、従来はサンプルガス抽出系、ガス精製系、質量分析計の3部分の第一段の排気は一台のロ-タリ-ポンプで行っていたが、もう一台追加することによってサンプルガス抽出系と、他の部分の排気系統を別にした。これにより、ガス抽出系の排気を行うときに、水素を中心とするガスがタ-ボモレキュラ-ポンプを通して高真空に保たれたガス精製系に逆流するのが防げるようになった。 以上のような改良を施した後、丹沢深成岩体の年代測定を行った。今年度重点的に行ったのは岩体の北部(道志渓谷の南側)と岩体西北部(石割山岩体)で、夏から秋にかけて試料採取を行った。K-Ar年代の結果は、岩体北部の試料から分離した角閃石に付いて、4〜6Ma、石割山岩体に付いては、角閃石で7Ma、黒雲母で8.6Maの年代を得ている。今回の結果を、今までに得られている結果と合わせて検討すると、丹沢岩体の迸入年代は7Ma、あるいはそれより少し古い年代になると考えられる。 ^<40>Ar-^<39>Ar法に関しても山形大学総合放射性同位体実験室にガス抽出系と精製系を設置し、実験を行っている。今年度は、当実験室専用の年代測定用標準試料の作製を行った。標準試料としたのは群馬県高崎市西南に分布する馬場タフから分離した黒雲母で、通常のK-Ar法でも、^<40>Ar-^<39>Ar法でもよく一致した11.5Ma程度の年代を示した。 丹沢の試料は、現在中性子照射を終えた段階である。
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