マツヤマ逆磁極期の中のハラミヨ、オルドバイの正磁極亜期の間の短い未確定の正磁極亜期の存在を確定し、短い磁極亜期に特有な地球磁場のふるまいを研究するため、房総半島に露出している海成堆積物をおもな対象として、古地磁気学的・岩石磁気学的研究を2年間にわたって進めてきた。当初より、逆磁極期中の短い正磁極亜期を認識することは、その有意性を証明するのは困難であることが予想された。それは、ブリュンヌ正磁極期中に獲得された2次磁化を完全に消磁するのが、従来必ずしも簡単ではなかったからである。まず、本研究費で購入した3成分フラックスゲ-ト磁力計で、熱消磁炉の内部を常時5nT以下に維持しながら熱消磁を行うことが可能となった。しかしながら、消磁温度を300度以上に上げると、ほとんど全ての試料が規則的な消磁特性を示さなくなることが判明した。300度では2次磁化を消去するのに十分ではないが、その温度までに示された消磁特性が信用できるかどうかを判断するための基準作りを行うために、堆積物中の磁性鉱物の種類と磁区構造を推定できるようになることを次の目標とした。具体的には、等温残留磁化(IRM)と非履歴性残留磁化(ARM)それぞれの交流消磁にたいする安定性(MDF)を比較する方法(LowrieーFuller test)、ARMを利用したQ比測定、3つの直交するIRMを印加した後熱消磁する方法(orthogonal IRM method)などを用いた。磁性鉱物の種類を同定するのにはorthogonal IRM methodが極めて有効であることが分かった。また、LowrieーFuller testによって求められるいくつかのパラメ-タから見かけの磁区構造を推定することが可能であることが確かめられた。これらの判断条件を個々の試料に対して適用することにより、消磁実験の結果を合理的に判定することができる見通しがついた。この種の研究は内外を問わずまだ十分ではなく、今後さらに努力を傾けなければならない。
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