研究概要 |
中央構造線(以下MTLと略称)に沿う和泉層群(上部白亜系)の主な形成地域は和泉層群堆積盆地(以下ISBと略称)と呼ばれ、MTLの横ずれ堆積盆として最近注目されてきた。本研究では、今年度MTLのstrikeーslip duplex(横ずれ複合断層)を被覆した和泉層群の変形様式の調査・研究を行い、ISBの形成像を検討した。この研究で明らかになった点及び試みを以下に述べる。 1.和泉層群の変形様式:和泉層群(タ-ビダイト相)の非調和褶曲を解析し、その形成機構を解明した〔1990年1月に口頭発表、日本地質学会関西支部報、no.109(印刷中)〕。さらに、非調和褶曲に伴う雁行状断層構造を用いて、層理面に沿う剪断ひずみを試算し(最大0.5)、この層面すべりと横ずれ複合断層の断層ブロック及び被覆和泉層群の傾動との関係を明らかにした〔1989年12月の構造地質研究会で口頭発表、現在投稿準備中〕。 2.ISBの形成像:和泉山脈〜淡路島東部地域の地質構造図を作成し、ISBがMTLのreleasing bendにおけるextensional strikeーslip duplexingによって形成されたプル・アパ-ト型堆積盆である可能性を指摘した。〔28th IGC,Abstracts,V.2,P.447,1989;Geology,V.18,1990(in press);構造地質、no.35(印刷中)〕。あわせてその形成年代を明らかにするために、酸性凝灰岩のF.T.年代を一部検討した〔72Ma,1989年4月の日本地質学会年会で口頭発表〕。 3.今後の展望:MTLのような大断層では、そのセグメントによって異なるタイプの横ずれ堆積盆が形成されている可能性もあり今後検討を要する。さらに、典型的なプル・アパ-ト型堆積盆と考えられているDead Sea Basinとの比較検討も重要であると思われる。
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