研究概要 |
平成2年度には,中国地方中・西部の後期白亜紀ー後期古第三紀火成岩類,琵琶湖南部地域の後期白亜紀花崗岩質岩体と湖東流紋岩類,隠岐島後における新第三紀火山岩類,韓半島東部の白亜紀,新生代火山岩類およびイエメン台地の新生代火山岩類の地質調査,記載岩石学,KーAr年代・RbーSr年代測定,XRFとINAAによる全岩主・微量成分分析,Sr.Nd同位体組成測定を行った. その結果,以下に示す諸点が明らかとなった.(1)白亜紀には西南日本内帯のマグマソ-スとしての上部マントルと下部地殻は後期古第三紀と前・中期中新世のものに比べて,著しく多様性を持ったものであった.海嶺の沈み込みに起因すると考えられる高Mg安山岩の活動も認められる.白亜紀における塩基性ー中性火成活動をみると,西南日本内帯では非アルカリ岩系列の活動が卓越するが,韓半島ではアルカリ系列,一部ソレアイト系列の活動があることから,岩石系列の水平的変化が白亜紀の火成活動の認められる可能性が高い.(2)琵琶湖南部において後期白亜紀環状花崗岩質岩体と湖東流紋岩類は密接な成因的関係を持ったものであり,巨大なコ-ルドロンと珪長質マグマ溜りの存在が推定された.(3)山陰西部に産する後期古第三紀今岬玄武岩は前・中期中新世のものと極めて類似した主・微量組成やSr・Nd同位体組成を持つソレアイトであり,すでにこの時期に日本海の拡大は先駆的に始まっている.(4)アルカリ岩の活動は山陰地方では14Maから,韓半島東部では15Maから始まるが,隠岐島後ではすでに22ー19Ma頃にこの活動が見られ,地域によって異なることが明らかとなった.(5)イエメン台地の新生代火山活動に関してもKーAr年代と全岩化学組成上,いくつかの重要な発見があった.
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