1.島根県松江市-大田市間で7月14日-18日、11月3-6日、11月23日-27日の計14日間、中新世火山岩類(川合、大森、松江累層)の野外調査を行ない、化学分析用、古地磁気測定用およびK-Ar年代測定用の試料をそれぞれ約60の露頭から採取した。 2.採取した試料の岩石薄片を作製し、偏光顕微鏡観察により変質の程度を検討し、各測定用に40試料を選んだ。 3.これらの試料についてK-Ar年代と古地磁気方位を測定した。川合累層の年代は、15-18千万年を示し、その古地磁気方位は大部分が東に約45度ふった偏角を示した。大森累層、松江累層はそれぞれ13-15千万年、11-12千万年んの年代値を示し、共にほぼ現在と同じ北向きの偏角を示した。このことは中新世に西南日本が時計回りに約45度回転し、背後に日本海が形成されたという従来からの我々の主張を支持し、さらにその回転運動が14-16千万年前の間の短い期間に起こったことを示す。 4.採取した試料の主化学組成を蛍光X線法で、希土類元祖を含む微量組成を中性子放射化法で測定した。現在までに15試料の分析を終了したが、残りの試料については測定継続中である。これまでのところ主化学組成に関しては、川合累層と大森累層の間には大きな差は見られないがアルカリ量が大森累層でやや減少している傾向が見られる。また、これらと松江累層の間には大きな違いが見られ、松江累層で大きくアルカリ量が増加している。希土類元素の分布パタ-ンは、川合累層と大森累層の間には大きな差はなく、共に軽希土類元素がわずかに濃集しているのに対して、松江累層では軽希土類元素が著しく濃集したパタ-ンを示す。これらは、西南日本の回転運動の開始される直前の川合累層と回転直後の大森累層の間で、マグマの起源物質に、アルカリ元素を除いて大きい差がなかったことを示すかもしれない。
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