研究概要 |
1.平成元年と平成2年に約20日間の野外調査を山陰中央部で行い、60を超す露頭から化学分析用、古地磁気方位測定用、放射年代測定用試料を漸新世から中新世にかけての火山岩採取した。試料の大部分は安山岩〜玄武岩試料である。2.持ち帰った試料すべての岩石薄片を作成し、各試料の変質の程度を検討して、各測定に適した試料を選択した。3.漸新世の古地磁気方位と放射年代に関してはすでに多く報告しているので、古地磁気方位の測定は中新世の火山岩類についてのみ行った。その結果、下位の川合累層の方位は約45度と大きく西偏しているのに対して、上位の大森累層と松江累層のそれは現在の地球磁場とほぼ同じ方位を示した。4.KーAr年代の平均は川合累層で16.1Ma,大森累層貞14.3Ma,松江累層で11.3Maであった。これらの年代測定と古地磁気方位の測定結果から、西南日本の時計回り回転運動が約16Maから14Maの間のわずか2Maに間に起こり、その回転角度は40度であったことが推定される。5.分析した火山岩類の希土類元素のコンドライト規格化パタ-ンは漸新世の川内層群から大森累層までほとんど変わっておらず、軽希土類にやや濃集したパタ-ンを示した。それに対して、松江累層のそれは軽希土類にきわめて濃集したアルカリ岩に特有な希土類パタ-ンを示した。これらは火山岩類の化学的性質が西南日本の回転中の15Ma頃と回転前10Myrの間は起こらず、回転後3myrの間に急激に起こったことを示している。大森累層の試料には玄武岩、安山岩がともに含まれており、同じ様なパタ-ンを示す。また、松江累層の試料はすべて玄武岩である。このことはたぶん大森累層と松江累層の間の3Myrの間に西南日本下のマントルに変化が生じたことを示しているもの推定される。
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