丹波帯の赤色チャ-トと玄武岩類について、古位置の情報を得ることを目的として古地磁気の研究をおこなった。測定試料は京都府京北町芦見谷、および京都市右京区大森から採取した。これらの地点のチャ-トは放散虫化石の研究から二畳紀のものとされ、また周山向斜と呼ばれる褶曲を構成している。 採取した定方位試料の磁化は超伝導磁力計(HOXANHSR-3RF)をもちいて測定し、交流消磁と熱消磁を段階的におこなうことによって磁化成分の分離を試みた。その結果、チタノマグネタイトがになうと思われる磁化が200-400℃の温度範囲に見いだされたが、400℃以上の熱消磁後の試料の磁化が不安定になり、より高温に期待されたヘマタイトの磁化を検出することはできなかった。400℃程度の加熱で初期帯磁率も増大することから、試料中の粘土鉱物などの酸化によって新しくマグネタイトが形成され、その磁化が本来の残留磁化の検出の障害となったと思われる。丹波帯で採取した試料には、高温磁化成分の存在が報告されている美濃帯犬山地域の赤色チャ-トに比べて、少量のヘマタイトしか含まれていないのかも知れない。丹波帯の試料から見いだされた低温の磁化成分は、地層の傾動を補正する前に、偏角50°、伏角50°付近に分布する。これは西南日本の前期中新世以前の岩石に特徴的な古地磁気方位であり、丹波帯の岩石が、アクリ-ションによるテレインの形成後、約15Maの西南日本の回転までの時期に二次的な磁化を獲得したことをうかがわせる。 京都府の丹波帯の研究と平行して、滋賀県北部と美濃帯犬山のチャ-トについて予察的な磁化測定を、また赤石山地の四万十帯のチャ-トについて放散虫化石の変形をもちいた褶曲様式の研究をおこなった。これらについて、今後、磁化測定と変形機構の解明を組み合わせた研究をおこなう予定である。
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