研究概要 |
現世および第四紀の深海底層水の指標のひとつである石灰質底生有孔虫Molonis属について検討した。 1.高知県沖・大東海嶺付近・小笠原諸島東方・シャツキ-ライズ付近の深海底より採取された柱状試料をもとに、更新世後期〜完新世の同属の形態解析を行った。また,それらの標本を太平洋の現生標本およびヨ-ロッパの模式的標本と比較しつつ、種内変異と種の分類と層位分布について検討した。その結果、以下のような結果を得た。 (1) 柱状試料にはMelonis sphaeroides,Melonis affinis,Melonis sp.A,M.barleeanusが含まれる。 (2) M.sphaeroidesには寒流系の変種が認められる。また,従来,M.nicobarensisと呼ばれてきたものは,M.barleeanusの1形態型である。 2.これらの成果を,古生物学会例会(6月,瑞浪化石博物館)および第4回底生有孔虫国際シンポジウム(BENTHOS '90;10月,仙台)において発表した。 3.新生代化石種の時空分布を把握するため,国内各地より試料を採集し,化石群集の検討を行った。その結果,岐阜県瑞浪地域(下部中新統上部),高知県大野(下部更新統),沖縄県島尻(上部鮮新統)の各地より,あらたにMelonis属に同定される化石標本を得た。これらの標本と前年度までに得た標本について,引続き分類学的調査を行っている。今後,分類学的な混乱のみられる種群についてさらに検討し,必要な整理を行いつつ,各々の種の層位分布ならびに古生態について検討する。
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