有明海で掘削された2本の海上試錐について含まれる石灰質ナノ化石を観察し、万田層群四山層は大部分が後期始新世のCP15帯に対比できることを明らかにした。また、四山層の最下部は中期始新世後葉のCP14b亜帯に、最上部は漸進統初頭のCP16a亜帯にそれぞれ対比できる可能性が高い。また、長崎市西方海上で掘削された2本の基礎試錐を調べた結果、始新統と漸進統の境界は松島層群中戸層の最上部にあり、中戸層の大部分は始新世紀末期のCP15b亜帯に対比できる。さらに、西彼杵層群の板ノ浦層と蠣ノ浦層は前期漸新世全葉のCP16帯に、その上位の大島層はCP17〜CP19帯(前期漸新世中葉から後期漸新世)のどこかに対比できることも分かった。 陸上に露出する芦屋群層の研究では、山鹿層上部が前期漸新世後葉のCP18帯に、坂水層最上部が後期漸新世後葉のCP19b亜帯に対比できることは分かっていた。今回は唐津炭田の杵島層群についても露頭試料を研究し、最下部の杵島層がCP16a亜帯に、最上部の畑津頁岩層がCP19b亜帯に対比されることが判明した。また、大島に露出する間瀬層最上部からCP16c亜帯に相当する石灰質ナノ化石群集を発見し、海上試錐での観察結果を裏付けた。大島層に相当する徳万層、塩田層、日切層からもナノ化石を検出したが、産出する個体が少ないことと保存の悪さから化石帯の判定まではいたっていない。 天草の古第三系については、これまでに中期始新世のCP12〜CP14帯の群集を確認していた。今回天草下島北端の坂瀬川層群鬼池層からCP15b亜帯を示すナノ化石群集を発見し、坂瀬川層群上部は三池・有明炭田の万田層群上部とほぼ対比できることを確認した。
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