研究概要 |
1.飛騨外縁帯福地の時代未詳空山層が,玄武岩・斑れい岩・蛇紋岩・安山岩などで構成される複合岩体であり,古生界基盤のオフィオライトと中生代火山岩類の両者を含むことが予想される。 2.飛騨外縁帯福地の吉城層からシルル紀三葉虫Encrinurusを発見し,記載した。吉城層の時代はこれまでオルドビス紀とされてきたが,この三葉虫化石産出により,シルル配であることが明らかになった。 3.前期石炭紀の中国における北方動物区を特徴づける腕足類Rotacaが,南部北上帯の日頃市層下部から産出することが確認された。このことから南部北上帯は前期石炭紀には生物地理的に,中国東北部・内蒙古・新彊地区と近い関係にあったと考えられる。 4.腕足類のchoristitesが南部北上帯の中部石炭系長岩層から産出するが,このことから中期石炭紀にも南部北上帯と中国北〜東北部との関連性があるといえる。 5.中期ペルム紀の南部北上・飛騨外縁帯の腕足類のフォ-ナは,北方型とテチス型の共存する混合フォ-ナであり,シホテアリン南部・吉林省南部・内蒙古南部・河北省北部のフォ-ナと似ている。これらの地域は,南部北上・飛騨外縁と共に,中期ペルム紀の頃,中朝地塊(古陸)周辺の大陸棚の一部であったと考えられる。 6.北部北上帯平井賀の槙木沢層の砕屑岩から,中期ジュラ紀の放散虫化石を検出した。既存の資料と合わせ,北部北上帯が主にジュラ紀付加体で構成されることが確実になった。 7.以上のことから,南部北上ー飛騨外縁帯,北部北上ー美濃帯,阿武隈帯がそれぞれ一連の地質体とみなされる。そして東北日本と西南日本は本質的にほとんど違いがないと結論づけられる。
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