阿仁合型植物化石群を含む、珪藻と堆積相から判断した、淡水成ないしは陸成堆積物は、前期中新世前半(24〜20Ma)を通じて、日本列島とアジア大陸の間に一部存在していた湖水盆で形成されたと考えられる。この時代に日本海はまだ誕生しておらず、日本列島はアジア大陸と一体になっていたことが地質学的・古生物学的・地磁気学的証拠からもわかる。台島型植物化石群を含む、珪藻と堆積相から判断した、汽水成堆積物は、前期中新世後半(18〜16Ma)を通じて、現在の日本海域に起った陥没窪地(グリーンタフ変動後期のリフト形成)に太平洋からの暖流が流入していた「原始日本海」で形成された。中期中新世初頭(16〜14Ma)に、日本海の急速な拡大に伴って西南日本は右回りに、東北日本は左回りに回転して現在のような日本列島になったことが古地磁気学から知られた。この時期を通じて、南極底層水は太平洋へ強く流入するようになり、珪質堆積物が形成された。さらに、14Ma以降現在までの激しい寒冷化気候に伴う底層流-湧昇流の強化が多量の珪質堆積物をもたらした。阿仁合型から台島型への移行期を代表する混合型植物化石群の存在については、現在まだ確定していないが、珪藻と生層序から判断して、存在する可能性が強いので、植物化石群含有層の詳細な層序的検討と共に植物群そのものの検討、さらに随伴する花粉と珪藻群集の検討が不可欠である。 淡水成堆積物には、多種類の淡水棲珪藻が含まれており、淡水棲珪藻の系統分類に関する重要な資料となる。例えば、Aulacosira属の起源としてのA.elongata(新種)の発見、現生汽水棲Actinocyclus octonariusの祖先種としてのA.octonariformous(新種)の発見である。
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