研究課題/領域番号 |
01540646
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
長谷 義隆 熊本大学, 教養部, 助教授 (40040109)
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研究分担者 |
尾田 太良 熊本大学, 理学部, 助教授 (60108454)
岩崎 泰頴 熊本大学, 理学部, 教授 (40013750)
村田 正文 熊本大学, 理学部, 教授 (00004309)
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キーワード | 九州後期新生代堆積層 / 熊本平野沖積層 / 阿蘇カルデラ内堆積層 / 玖珠盆地 / 人吉盆地 / 植物化石 / 植生変遷 / 気候変化 |
研究概要 |
九州に分布する後期新生代堆積層の内で、大分県玖珠盆地に分布する地層は、従来「玖珠層」あるいは「玖珠層群」と呼ばれてきたが、本研究・調査の結果、互いに時代および堆積盆地を異にする、少なくとも4つの層準の湖成層(下位より太田川層、岩室層、宝泉寺層および野上層(盆地北部では森層)が識別される(長谷・岩内、1990)。これらの湖成層形成の間に挟在する火山岩類のフィッション・トラック年代により、太田川層は鮮新世に、岩室層および宝泉寺層は更新世前期に、野上層および森層は更新世中期に形成されたことが明らかになった。含有される植物化石については、宝泉寺層および野上層の他、現在太田川層産のものについて検討中である。 熊本県内に分布する湖成層のうち、芳野層について、その時代、含有される植物化石を検討した。その結果、芳野層は更新世中期に形成され、堆積当時の植生は一般に温帯要素の優勢なものであったが、一時、常緑カシ類やシイノキ、クスノキ科の樹木が優勢な温暖環境化にあったことが明らかになった。また、熊本平野および阿蘇カルデラ内の地下を構成する更新統および完新統の堆積物(いわゆる沖積層)の花粉分析の結果、本地域の最終氷期以降の植生変遷が明らかになり、気候変化の様子が捉えられた。すなわち、熊本地域では、最終氷期の末に現在の冷温帯ないし亜寒帯要素を示す植生があり、気候の温暖化に伴って、落葉広葉樹主体の植生からやがて常緑広葉樹の優勢な植生へと変化していった。この常緑広葉樹の優勢な時期は海棲の貝化石の産出状況や放射年代からみて、いわゆる縄文海進の時期にあたる。この結果については現在執筆中である。さらに、県南部の人吉盆地に分布する人吉層の内、湖成層として形成された人吉層上部の分布の広がり、いわゆる肥薩火山岩類との層序関係および堆積年代(鮮新世後期)が明らかになった。本層産の植物化石については今後検討するつもりである。
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