研究概要 |
玖珠盆地太田川層下部の大型植物化石および花粉化石の検討の結果,約300万年前の当該地域の植生は,落葉広葉樹を主体とし,針葉樹を伴う現在の温帯の気候下に対応するものであったと考えられる.熊本平野の地下ボ-リング・コア試料の花粉分析の結果,Asoー3とAsoー4の間の堆積物形成時の植生は,Fagus,Carpinus,Ulmus/Zelkovaなどの落葉広葉樹にAbies,Tsugaを交えたもので,現在の中間温帯から温帯の植生に対応すると考えられる.またマツ林の発達は,Asoー3噴火の影響とみられる.熊本・鹿児島・宮崎3県に跨る肥薩火山区の火山岩類の層序は下部と上部に大別され,下部は鮮新世前期に始まる平国層を経て,輝石安山岩の活動と角閃石安山岩の活動が繰り返し,またその産状は膨大な凝灰角礫岩に溶岩を挟在する.一方上部は広大な平坦面を形成する溶岩で特徴づけられる.また少なくとも3層準に火砕流の活動が明らかになった.放射年代の測定結果は,当該火山区の火山活動が鮮新世に活発であったことを示唆する.宮崎県児湯郡新富町,高鍋町,西都市を中心とする地域の宮崎層群から産出する浮遊性有孔虫を検討して,浮遊性有孔虫化石層序が設定された.さらにこの地域の最下部の地質時代が鮮新世であること,また最上部は更新世にはかからないことが明らかになった. 九州の後期新生代の湖成層および内湾性堆積物から知られるフロ-ラは,中新世後期の中山,鮮新世前期の平国,黒木,前期から後期の重平,後期の太田川,永野,大和,人吉,安心院および余,更新世前期の山之口,姶良,宝泉寺,前期から中期の吉田,杖立および大山,中期の津森,芳野,野上および阿蘇野,えびの,中期から後期の新開,内堅,Asoー2〜Asoー3間,後期のAsoー3〜Asoー4間,飯野ー加久藤,更新世から完新世の島原海湾および有明粘土,内牧および別府湾のものに整理される.
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