研究概要 |
1.福井県北部の中新統から産出したアオザメ属の歯化石について 福井市郷士自然科学博物館の中川登美雄氏と共同で,福井市金津町の中新統産のアオザメ属の歯化石2標本Isurus planus Rafinesqueの右上顎側歯と,I.hastalis(Agassiz)の左上顎側歯各1本について,形態学的特徴を記載・報告した。これらは,北陸地方の第三系における板鰓類化石の貴重な資料である。 2.軟骨魚類の歯の組織構造に関する進化学的研究 現生および化石の軟骨魚類の歯を材料として,その形態学的・組織学的検討をおこない,古生代から現世まで進化とともにどのように変遷してきたかについた考察した。板鰓類の歯における,よく発達した真正象牙質は肉食への適応としての構造,骨様象牙質は歯を急速に形成するための構造,皺襞象牙質は硬い殻をもつ無脊椎動物を食べるために歯質を強化する構造と考えられる。全頭類では,硬い殻の無脊椎動物を食べるのに適応して,歯の癒合が進み,常生歯化した大型の歯板をもつようになったものがおおい。このように,軟骨魚類の歯の構造は,進化のレベルよりも食生などへの適応の傾向が強いことが明らかにされた。 3.日本産中生代のヒボドゥス上科板鰓類の歯化石について 京都府夜久野町の夜久野層群(三畳紀アニス期)産のHybodus sp.,同町の難波江層群(三畳紀カ-ルニア期)産のAcrodus sp.,宮城県志津川町の志津川層群(ジュラ紀ヘッタンジュ期)産のAsteracanthus sp.の3種に同定される歯化石について,その形態学的特徴を記載し報告する。これらは,わが国の中生代板鰓類化石の貴重な資料である。
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