本研究は研究費補助金の交付が追加分として決定されたものであり、昨年10月末に報告を受けて動き始めたので、まだ十分な成果を挙げるまではいっていない。現在までに行ったことは、岩手県宮古市周辺の花崗岩体(宮古花崗岩体)についておもに道路沿いの地質調査とサンプリングを行った。地質調査の結果以下のことが判った。宮古花崗岩体は弱い片状構造を呈するが、石英閃緑岩ないし花崗閃緑岩の岩相で大きくみれば、分布域が異なっている。また、塩基性包有物はまれで、アプライト・ペグマタイト脈も少ない。これらの結果から現在考えられることは、宮古花崗岩体中にはWの鉱山が胚胎しているが、その規模は小さく、本花崗岩体が多量の金属鉱化作用を伴っている可能性は少ない。 現在サンプルの薄片を作成中であり、引き続いて薄片の記載・主要造岩鉱物のEPMA分析と、花崗岩中の流体包有物についての加熱・冷却実験を取り急ぎ行う予定である。また、来年度は宮古花崗岩体中の石英閃緑岩と花崗閃緑岩の関係を把握することと、鉱床付近の変質などにも注目をして調査を行う。このような調査・研究から本花崗岩体が小規模の金属鉱化作用しか伴わないのか、あるいは鉱化作用を受けたレベルが侵食されてしまったためか、などについて考察を進める。さらに、その付近で金属鉱床を明瞭にともなう他の岩体も同様の調査およびサンプリングを行い、岩石・鉱物の化学分析から花崗岩体の分化過程を把握し、北上北部地域に分布する花崗岩について鉱化作用を伴う原因について検討する予定である。
|