大陸地殻下部物質の変化についての岩石学的研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01540653
• 研究機関: 横浜国立大学
• 研究代表者: 有馬 眞 横浜国立大学, 教育学部, 助教授 (10184293)
• キーワード: 大陸地殻下部 / 高圧実験 / 珪酸塩鉱物 / 相平衡 / グラニュライト

研究概要

平成元年度の実績は次のようなものである。
(1)カナダ・ラブラド-ルに産出する、大陸地殻下部起源の変成岩について、岩石学的・地球化学的検討を行った。大隅石を含むグラニュライト相変成作用の生成条件を明らかにし、P-Tgridを作成した。変成作用に従う化学成分の移動は無視できる事が明らかになった。成果はJ.Petrologyに投稿した。(2)実験岩石学の実験設備の整備を行った。熱水合成装置の購入、設置と、それの温度・圧力のキャリブレ-ションを行った。地殻下部条件下での相平衡を明らかにするため、ピストンシリンダ-型高圧発生装置で珪酸塩鉱物の相平衡を検討した。合成した大隅石を用いて実験を行い大隅石は地殻下部約30kmの条件下で安定であることを明らかにした。また熱水合成装置を用いて金雲母の合成を行った。地殻下部条件下での金雲母の安定についての実験は現在進行中である。(3)丹沢山地西部でざくろ石を含む流紋岩質岩脈を発見し、その貫入年代、化学組成、鉱物学的特徴を明らかにした。貫入岩体は幅50mに達し、年代は約2.4Maである。この年代は今まで丹沢では知られていない火成作用年代を示す。成果の一部は神奈川地学協会誌に発表した。下部地殻を構成する玄武岩質岩石の部分融解で生成したものと推定される。
次年度は金雲母を含む岩石の地殻下部における相平衡を明らかにするため、K_2O-MgO-Al_2O_3-SiO_2-O-H_2O-CO_2系の高圧下の相平衡について実験を行う。

研究成果

• [文献書誌] 有馬,真,今橋健彦: "南八ヶ岳火山岩中の捕獲岩についての予察的報告" 横浜国立大学・教育学部野外教育実習施設研究報告. 7. 1-6 (19889)
• [文献書誌] Watanabe,S and Arilma,M: "Vesuvianite and associated Skarn minerals in the Shiraishizawa area,Tanzawa Mountainland,Central Japan." Science Reports of the Yokohama National University sec.II.36. 71-86 (1989)
• [文献書誌] 有馬真,樋口將士,早津昭男: "蛇石火山岩類の鉱物組成とK-Ar年代" 横浜国立大学・教育学部理科教育実習施設研究報告. 6. (1990)
• [文献書誌] 有馬真,末包鉄郎,門田真人,加藤英樹,山下浩之: "丹沢山地西部で発見された、ざくろ石を含む流紋岩" 神奈川地学. (1990)
• [文献書誌] 末包鉄郎,門田真人,有馬真: "神奈川県西丹沢産含ザクロ石流紋岩" 東海紀要. (1990)
• [文献書誌] Arima,M.and Gower,C.F.: "Petrological and geochemical Characteristics of Osumilitebearing granulites in the eastern Grenville Province,eastern Labrador,Canada." Journal of Petrology. (1990)