研究概要 |
本研究では、大陸地殼下部を構成する物質の存在状態、および変成作用と部分融解過程に従う物質の変化と移動を明らかにするため堆積岩起源の先カンブリア代グラニュライト相変成岩に注目し、次の様な新しい知見を得た。1。カナダ東部・ラブラド-ル地域に産出する、グラニュライト相変成岩についての地質学的・記載岩石学的研究を行い、それらの時代・分布・鉱物学的特徴などを明らかにし変成条件を推定した。変成温度・圧力は1000℃,10Kbarに達したと推定される。アノ-ソサイト質マグマの地殼下部への貫入による熱変成作用により、周囲の泥質堆積岩起源物質中に大隅石やサフィリンなどが生成した。本研究で明らかなった変成作用起源大隅石産出は世界で5例目である。また、これら変成岩の地球化学的特徴から、部分融解による地殼下部岩石の化学的分化過程についての知見を得た。部分溶解過程で生じた液相はAタイプ花崗岩組成と推定される。2。高温型グラニュライト相変成岩の重要な指示鉱物である大隅石の安定関係を明らかにするため、実験岩石学的研究を行い、大隅石が大陸地殼下部に相当する圧力下で安定であることが明らかになった。大隅石は1000℃で12kbarまで安定に存在する。3。大陸地殼下部における泥質堆積岩起源のグラニュライト相変成岩の生成と地殼下部物質の部分融解が密接に関係している事があきらかになった。大陸地殼下部を構成するグラニュライト相変成岩は、非常に低い水の分圧下で安定であると考えられるが、この様な条件は部分融解で生成した液相に水が優先的に取り込まれ、液相が源岩から取り去られた結果実現されたと思われる。地殼下部の部分融解と花崗岩質マグマの生成、それに伴う溶け残り起源の高温タイプのグラニュライト相変成岩の生成は、地殼下部に貫入したアノ-ソサイト質マグマの活動に密接に関係している。
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