研究概要 |
平成2年度まで黒雲母・角閃石のOHと水との500ー750℃での分配実験をしたが、そのデ-タをまとめて、今までに発表されている他の人々の2篇の論文と比較した。また、天然の主として花崗岩質岩石の関閃石・黒雲母のSDと化学組成(とくにX_<Fe>=Fe/(Fe+Mg))との関係を調べ、実験の評価を行った。 その結果、私達の実験はAnのパイプ(外径3mm,厚さ0.25mm)中に、鉱物の試料を0.05〜0.08g程度を入れ、同時に0.002〜0.004gあるいは0.06〜gの水を加えて,シ-ルをし,500゚,600゚,700゚または750℃で3日間あるいは7日間の実験をした。SuzuokiーEpstein(1976)の実験は鉱物試料に対して100ー200倍の水を使用した。Graham et al.(1984)は1〜3倍の水を使用した。私達の場合は1.5〜3倍あるいは10〜15倍であった。鉱物試料はSuzuokiーEpsteinのは全雲母、黒雲母、角閃石であったが、そのX_<Fe>が0.40〜のものが一点で、あとはそれよりFeが少ないものであった。Graham et al.のものも特別のものは一点をのぞくと、X_<Fe>が0.3以下の角閃石と透角閃石があった。両者は大きく異っていなくて、そのX_<Fe>の範囲内では温度が高くなるとαが高くなり(次第に0に近づく),X_<Fe>が大きくなるとαは低くなるという傾向がはっきりした。 私達の実験は、X_<Fe>が0.4〜0.8の大きい黒雲母と透角閃石を行った。透角閃石は大まかにはGraham et al.やSuzuokiーEpsteiuと似ていた。しかし黒雲母はX_<Fe>が大きくなると,一定の傾向にならなかった。このことは透雲母のX_<Fe>が大きいもの(0.7〜0.8)では雲母の含水量が50%以下になり磁鉄鉱が沢山生じていた。このことは角閃石・雲母のOHと水のD/H分配が鉱物のFeの量によって実験結果は次第にあやしくなるということを意味している。しかし天然のものの結果はどうなるかは問題である。
|