粒径がそれぞれ30、50、60、90nm及び100nmより大きい5種類のジルコニア粉末を用意した。これらの試料を400°C・6GPaの条件に30分間保持後、室温・1気圧に急冷した。生成物のX線回折より粒径が30、50nmの場合は、高圧相である斜方晶I相が凍結可能なことがわかった。一方、粒径が60nm程度の場合は、過半が低圧相である単斜晶相に逆転移しており、これより大きい粒ではこの傾向はさらに著しくなった。次にダイヤモンドアンビルセルを用いて、相転移を10GPaまでの圧力領域においてその場観察した。その結果、相転移開始圧力は結晶子径が小さいほど、高圧側へずれること及び100nmより小さい試料は、これより大きいものに比べて広い圧力範囲にわたって単斜晶相と斜方晶1相とが共存することが認められた。また、微粒出発物質の高圧処理により凍結された斜面方晶I相を試料とし、熱量計により単斜晶ー斜方晶I相間の生成エンタルピ-差を求め、同じ試料による熱膨張率及び室温における圧縮率も測定した。合成実験から求められた2相共存圧として、(1)粗粒の場合 P=3.3GPa、(2)T(°C)=6.0GPaを入れて総合し、(1)T(°C)=1200ー200P(GPa)、(2)T(°C)=335 102P(GPa)、が単斜-斜方I相境界線として得られた。いずれの場合も境界線の勾配 dT/dPは負であり、これを外挿すると、1気圧335°C<T<1200°Cの温度範囲で斜方晶I相が安定相として出現することになる。副成分を加えた場合の影響を見るため、2mol%Y_2O_3を添加した試料につき単味の場合と同様の実験を試みた。この試料では単斜・斜方のほか、正方晶相も準安定相として凍結されるが、正方晶の密度は斜方晶I相とほとんど差のないことから、加圧しても正方晶はそのまま存在すると考えられる。
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