前年度の成果を基礎として、バデレアイトの高圧多形についてつぎの2種の実験をした。 1)斜方晶I相安定領域におよぼす添加剤の効果:添加物が相安定関係におよぼす影響を見るため、2mol%Y_2O_3を加えた微粒Zro_2を用意し、400〜600℃・5〜6GPaの条件60分保持後、急冷した。出発物質は常に単斜・正方の2相から成っているが、これを加熱・加圧処理すると単斜晶相の量が減少し、新たに斜方晶I相が出現した。一方、正方晶相の量は不変であった。これは正方晶相のイオン充填密度が斜方I相のそれより少し高いため、圧力の影響を受け難いためとして説明される。単斜晶相が斜方I相に転移する状況は添加物のない場合と大きな差異は認められなかった。 2)斜方晶II相の安定領域決定のため、単斜晶ZrO_2を出発物質として、600〜1100℃・12〜20GPaの範囲で成合実験をおこなった。結果を総合すると、1000℃・17.6GPa付近まではT(℃)=300P(GPa)ー4300で表わされる領域より高圧側で斜方晶II相の出現が確認された。一方、これ以上の温度・圧力条件では境界線の勾配が変わり、1100℃・20GPaでも生成物は単斜晶相のみであることが判明した。この事実を説明するために、16.5GPaと18GPaにおいて、温度を変化させながら試料の電気伝導度の測定を実施した。測定結果から、1000℃および1050℃近傍で伝導度の不連続が観測され、相変化の起っていることが判明した。これまでに発表されている相状態図と対比すると、この変化はバデレアイトの高温多形である立方晶相への相転移の発生が予想される。もしこの転移が事実であるとすれば、立方晶相の存在領域は高温で20GPa以上で高圧領域まで広がると結論され、単斜・正方・立方・斜方晶I・斜方晶II、各相間の安定関係をほぼ安定することができた。
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