研究概要 |
1.父島南西部に島弧ソレアイト類似の岩石を発見した。 ジョンビ-チ付近の火山岩がややTiに富むことはすでに知られてしたが、微量元素の測定により無人岩系列とは異なるマグマから導かれたことが明らかになった。本火山岩は玄武岩質安山岩から流紋岩にわたり、一般に無斑晶質で最も苦鉄質のものに少量の斑晶普通輝石が存在するが、それは全岩組成を反映して無人岩のものよりTiに富む。無人岩系列よりTi,Al,P,Yが高くSiが低い。K,Rbは無人岩と等しく母島の島弧ソレアイトより高い。本火山岩は無人岩と同時期に活動したと推定され、Mariana fore-arcに似る。 2.兄島に小笠原無人岩の中で最もMgOに富むものを発見した。 滝の浦の単斜頑火輝石無人岩はMgO 24%に達し、Fo93.2,NiO 0.50%のカンラン石をもつ。カンラン石と液のFe-Mg分配から無人岩初生マグマは少なくともMgO 19%をもち、コマチアイトに匹敵する高Mgマグマであることが分かった。カンラン石のNiは急激に減少し、カンラン石-液のNi分配係数として12を得た。この値は高Mgマグマとしては高くSiの効果の大きいことを示すとともに、無人岩が同一MgO量をもつコマチアイトよりNiの低いことを説明する。 3.父島東部に層状岩脈群を確認した。 無人岩枕状溶岩層の最下部が露われる石浦付近には、幅0.5〜2m,北西-南東方向の無数の平行岩脈がある。これは、単斜頑火輝石を含むことが多く、東方海面下に向かって岩脈の密度は高くなり、層状岩脈群の上部を表わす。 4.各種地質温度計より無人岩の生成温度として約1300℃が得られた。 カンラン石-スピネル、カンラン石-液のNi分配、MgO含量などから、無人岩は低圧下1250〜1350℃でマントルかんらん岩から分離したと推定される。これは島弧の火山岩としては異常な高温であり、また、海洋底拡大の証拠とされる層状岩脈群をもつので、無人岩は沈み込んだ海洋プレ-トから水の供給され得る一種の拡大中心で生じたと考えられる。
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