研究概要 |
1.小笠原諸島第三紀火山岩の研究 (1)父島東岸石浦の層状岩脈群:本年度特に重点的に調査した結果,本岩脈群はしばしば単斜頑火輝石斑晶を含む未分化の無人岩から主として構成されていることが分った.これは本地域以外の岩脈の多くが分化したデイサイト質のものであることと著しい対照をなし,本地域が枕状溶岩層の下底に当るという層序上の位置と相まって,本岩脈群がオフィオライトに特有な層状岩脈群であるとの先の見解を確認するものである。 (2)父島東南部巽湾周辺の火山岩:本地域からは父島では比較的稀なオ-ジャイトの斑晶をもつ無人岩が知られていたが,詳しく研究した結果,このオ-ジャイト無人岩は石浦周辺の単斜頑火輝石無人岩層の上位にくることが分った.また,その中にMg値89.3に達するオ-ジャイトを見出したが,これは今まで報告された無人岩のオ-ジャイトのうち最もMg値の高いものである.この岩石の斜方輝石のMg値の最高は88.1であるので,これはオ-ジャイトが斜方輝石より先に晶出したcpxーHMAであり,小笠原無人岩からのcpxーHMAの始めての確認である. 2.無人岩と讚岐岩の比較研究 (1)愛媛県忽那諸島のサヌキトイド:本地域で岩脈・岩頸として産するサヌキトイドは瀬戸内火山岩の中でも最も未分化なものであり、無人岩に匹敵するFo93のカンラン石,Cr_2O_360%のクロマイトを持っていた。 (2)千葉県銚子のサヌキトイド:瀬戸内火山岩と同様にopxーHMAとcpxーHMAが見出され,21Mgに瀬戸内と同様な火山活動の存在を示した. (3)微量元素の研究:瀬戸内海西部の火山岩53個の微量元素を測定し無人岩と比較した.瀬戸内火山岩は全てのインコンパチブル元素に富み無人岩よりはるかに枯渇の程度が弱いマントルから導かれた.Rb/Srが特に高く,含水流体相の影響を強く受けたと考えられる.
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