研究概要 |
1.日高変成帯のSタイプト-ナル岩のマグマ生成と結晶作用の条件について共同研究者と実験的研究を行っているが,その結果マグマは8kb,900℃,4ー5%H_2Oの条件で生成し,OpxーGrtト-ナル岩として結晶した温度・圧力条件は,約5kb,690ー720℃であることが分った.これは周囲のグラニュライト相変成岩から見積った値と一致している.日高変成帯は部分溶融の始った層(約23km深度)より上部が流動し,上昇して地表に現われたことになる.すなわち,圧縮場にある地殻が流動するのは流動し易い面があるためであり,その面は部分溶融の起りはじめた層が最も適合していることを示している. 2.日高変成帯の変成作用・部分溶融,地殻流動の研究から得られた結論を他の変成帯から検証するために,領家変成帯,四万十帯の研究を同時に進めている.領家変成帯も島弧地殻層が流動・上昇したところであるが,日高変成帯に比べより浅い層(13〜15km)が現われている.この部分での研究の途中経過では,部分溶融が行なわれていることが明らかになりつつある.領家帯の花崗岩存在量は日高帯の数倍であり,より深部では大量の花崗岩マグマが形成されたことが予想される.領家変成岩の解析によれば,変成作用の温度勾配は極めて高い.このことを浅い所で部分溶融がはじまること,大量の花崗岩が形成されることとは相関していることが予想される.これをさらに検証するために,四万十帯変成作用について花崗岩中の変成岩ゼノリスから検討を行っている.その結果,四万十帯下部は高温型変成岩層が形成されており,最大部は高温型グラニュライトになっていること,地温勾配は日高変成帯より低いことが判明した.これらは上の予想を裏付けるものであり,島弧における高温型変成帯ー島弧地殻形成プロセスに重要な意味をもつ.
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