研究概要 |
グラニュライト相における部分溶融のプロセスを具体的に描き出すために、従来行ってきた変成作用の解析から検討する方針を変え,部分溶融過程を残していると考えられる高温マグマ中に包有された変成岩の検討を行った.これは昨年から行っている四万十帯花崗岩中の変成岩,今年度新たに行った、玄武岩中の花嵐岩・堆積岩の溶融の研究などが含まれる. 1.四万十帯花崗岩中の変成岩類は日高変成帯と同様に,付加体堆積岩玄武岩が高温・低圧条件で広城的熱構造運動によって形成され,高温部ではグラニュライト相に達する。この条件で部分溶融によって花崗岩質メルトが形成されている証拠はあるが,量的には極めて少なく,大きな花崗岩体を形成するほどの溶融が起っていない。変成岩を取り込んでいる花崗岩は変成岩とは時代が異なり,別の時期に形成されたものである.したがって日高変成帯の場合と同様に,部分溶融の状況を残していない. 2.玄武岩(佐〓島小木玄武岩)中の包有物はマグマが高温のために,種々の程度に部分溶融しており,形成されたメルトはガラスとして残されている.したがって天然における岩石の溶融でプロセスを見るのに都合がよい.花崗岩〜閃緑岩では含水鉱物(黒雲田,角閃石)が石英と分解溶融反応によって早い段階で溶けてしまう.またカリ長石の溶融も早い.生じる液は部分部分によって組成が異なり,どの鉱物がその部分で溶融したかによっている.石英は最後まで溶け残る.このことは玄武岩のような高温マグマに包有されても部分溶融は極めて不均質に起り,溶けた液は容易に混合しないことを示している.この結果から判断すると,マグマの同化作用は一般的には起りにくいこと,少量の部分溶融によって花崗岩を大規模に作り得ない.
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