研究概要 |
1.日高変成帯グラニュライト相変成作用への温度ー圧力条件とその変化経路を詳細に解析した.その結果最高時(D_1)では800℃ー850℃,7ー7.2kb水平すべり上昇期(D_2)では700ー750℃,5kb,横すべり傾斜上昇期(D_3)では600ー400℃,3kb最高時には部分溶融が起っていることが判った. 2.グラニュライト相片麻岩,優白質脈の鉱物・岩石化学組成の検討結果前者は部分溶融の溶け残り固相,後者は溶けた液に相当する。大規模な溶融はさらに深部で起り,日高帯のト-ナル岩体を作った. 3.ト-ナル岩マグマの生成と結晶作用の岩石学的および実験的研究の結果,マグマは8kb以上,950℃以上の条件で,岩石の含水率4ー5%で形成されたと考えられる.結晶作用はGtーPlーOpxーBtーQzーCaーKfsの順で,900℃から700℃の間に行なわれた.Opxの晶出はマグマ中のOr成分の量に支配されることが判った. 4.四万十帯花崗岩中の変成岩包有物の研究を日高帯と比較検討のために行った.四万十帯では花崗岩(15Ma)に取り込まれる以前に広域変成作用があり(42Ma),グラニュライト相に達していると,微弱な部分溶融の起っていることが判明した.付加体が大陸性地殻化してゆく典型的例である.これは日高帯,領家変成帯とともに日本列島の造山運動の極だった特徴である。 5.領家変成帯は日高変成帯より高温・低圧である.ここでは14kmで700℃に達するが、それより数km深い所では部分溶融が起っていることが判った.REEの分析結果ではミグマタイトの一部は部分溶融によって形成された液ととけ残りの混合体が上昇導入したものである. 6.玄武岩中の包有岩についての天然における岩石の部分溶融の素過程を研究した結果,溶融は極めて不均質に起り,とけた液は容易に混合しないことが判った.
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