研究概要 |
最終年度のまとめの中で西南日本外帯の花こう岩類のタイプとその産状及び鉱物組合せの特徴について述べたもので,ここでは西南日本外帯、特に紀伊半島大峯地域と四国の高月山の花こう岩類の微量元素含有量とこれらのデ-タから推論される花こう岩類の成因について述べる.大峯地域の花こう岩類は南北約40kmにかけて分布するが,主として北部の4岩体,即ち,法力峠,白倉谷,川迫川,及び白川八丁岩体について述べる.IータイプとSータイプの花こう岩類の境は白倉谷小岩体にあり,両タイプは別個の岩体を形成している.4岩体中でIータイプの花こう岩類のSiO_2含有量は62ー69wt%で,Sータイプのそれは71ー77%である.負のEu異常はIータイプで0.67ー0.55と小さく,Sータイプで0.61ー0.07と大きい.大峯地域の花こう岩類のBaーRb図、SrーRb図,とREEパタ-ンから,大峯地域の花こう岩類,特にSータイプの花こう岩類は主として花こう閃緑岩質マグマの分別結晶作用によって分化したことを示している.四国高月山の花こう岩体は花こう閃緑岩と花こう岩の境付近の化学及び鉱物組成をもっている.その肉眼的及び鉱物組合せの特徴から,Bー,WーA,WーCの3タイプに大別される.Bータイプは肉眼的には黒灰色であるが,SiO_2含有量は61ー66%,負のEu異常は0.95ー0.69;WーCタイプは,SiO_2含有量67ー69%,負のEu異常は0.73ー0.63;WーAタイプは,SiO_2含有量66ー70%,負のEu異常は0.88ー0.56である.WーC及びWーAタイプは花こう岩らしい外観を示している.先に示したSiO_2含有量と負のEu異常のデ-タから分かるように,高月山の花こう岩類はWーAタイプを除いては,殆ど分別結晶作用を行っていない.BaーRb図及びSrーRb図も上述の推論を支持している.Bータイプは元来地殻深部の変成岩であり,WーCタイプのマグマが多少この変成岩を同化して出来たのが,WーAタイプであろう.今後はこれを立証しなければならない.
|