最近、歯のエナメル質の表面にみられるペリキマ-タ(周波条)の、周期的な形成が報告されている、本研究は、その周期性を明確にすることを目的とする。 履歴のあきらかなニホンザル15個体を選出し、上顎における第1永久切歯の形成過程を観察した。たとえば、毎週1度、X線をもちいて写真撮影をおこない、歯冠部の形成状態を記録するなど。その結果、歯冠部の石灰化の開始時期は、固体差がかなりみとめられるものの、生後ほぼ200日であることが判明した。また、同様の他個体で検討したところ、歯冠の形成は、生後約700日で完成することが確定した。 一方、年齢既知のニホンザルの骨格標本から、上顎骨の第1永久切歯の定方向断面を作製し、光学顕微鏡と走査電子顕微鏡による観察に、写真撮影をくわえ、ペリキマ-タの数が140-150本に及ぶことを確認した。また、各ペリキマ-タを構成するエナメル小柱には、4-10本の横紋がみとめられた。本研究費によって購入したパソコンをもちいて統計処理をおこなった結果、平均6本の横紋の存在が決定された。 1日に1本の割合で横紋が形成されるとする従来の知見によると(700-200)/6〓83となる。つまり、生後約700日の標本では、85本のペリキマ-タで十分である。ところが、実際には150本にも及び、前提の知見に著しく矛盾することが判明した。 エナメル小柱の横紋数によるペリキマ-タ形成の周期を6-7日とする知見は、観察・考察の誤謬にもとづくものである。本研究は、さらに多くのサル・ヒトの資料を検討し、ペリキマ-タ形成の周期性に関する新知見を総括する。
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