最近、歯のエナメル質の表面にみられるペリキマ-タ(周波条)の、周期的な形成が報告されている。本研究は、その周期性を明確にすることを目的とする。 履歴の明かなニホンザル15体を選出し、上顎第一永久切歯の形成過程を毎週1回X線を用いて写真撮影をおこない、歯冠部を観察した。デ-タは全て、本補助金により購入したパソコンを用いて統計処理をおこなった。その結果、歯冠部の石灰化の開始時期には個体差が認められるが、生後約200日であることが判明した。 さらに、年齢既知で歯冠形成途中の、4個体のニホンザル上顎永久第一切歯のエナメル質の定方向断面標本を作成し、光学顕微鏡と走査電子顕微鏡による観察をおこなった。その結果、ペリキマ-タ間には常に5本の横紋がみられること、また歯冠形成に要した日数の2ー3倍の数のエナメル小柱の存在が確認された。 本研究により、ニホンザルの各ペリキマ-タ間にはエナメル小柱横紋が5本あることが判明した。また、1日に1本の割合でエナメル小柱横紋が形成されるとする従来の知見によると、エナメル小柱自身も1日に1本づつ形成されることになる。すなわち、歯冠形成に要する日数とエナメル小柱の数がほぼ等しいことが予測される。しかし、実際にはエナメル小柱の数はその2倍以上にも上ることが確認され、従来の知見を再検討する必要が出てきた。
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