研究概要 |
思春期における体形の変化を,多変量アロメトリを援用し比成長速度を解析することによって検討した.被験者は1979〜1988年に毎年1回の『小城成長調査』に参加した,のべ9,209人の小・中・高等学校の児童・生徒である.同時に昨年度の体重,身長,前腸骨棘高,座高,肩峰幅,腸骨稜幅に上肢長を追加して,物理学的時間軸としての暦年齢に対する最大成長速度年齢および生物学的時間軸としての骨成熟スコアに対する最大成長速度スコアを検討した. 多変量アロメトリは自然対数に変換した測度から共分散行列を計算し,主成分分析での第1主成分をとる方法によった.座高,前腸骨棘高,上肢長,肩峰幅,腸骨稜幅の分析は,これらの比成長率が一律ではなく(等成長ではない),からだのサイズに増大に伴うプロポ-ションの変化があること示した.その変化の傾向は男女で違いがあった.男子では,前腸骨棘高(1.074),上肢長(1.050),肩峰幅(1.025)は優成長を示し;腸骨稜幅(0.976),座高(0.859)は劣成長を示した.女子では,腸骨稜幅(1.163),上肢長(1.011)は優成長を;前腸骨棘高(0.997)はほぼ等成長を;肩峰幅(0.945),座高(0.858)は劣成長を示した. 上肢長のピ-ク年齢は,男子では12.84歳で出現した.その順序は前腸骨棘高(12.69歳)にやや遅れ身長(12.89歳)とほぼ同じであった.女子では10.49歳でピ-クを迎えた.その順序は前腸骨棘高(9.90歳)についではやく肩峰幅(10.94歳)よりも遅い. 骨成熟軸で上肢長のスパ-トのタイミングを見ると,男子ではTW2RUSスコアで554点,女子では672点の時点に出現した.これは男女ともに残りの項目のスパ-トタイミングとほとんど等しい.
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