研究概要 |
20年来の研究で、東南アジアから中国、シベリア、南米にわたる蒙古系民族について、抗体の遺伝子(Gm型)を用いて、分子生物学的な観点から人類学的な解析を行い、蒙古系民族は分散の中心がバイカル湖畔にある「北方型」と、それが中国雲南・広西地域にある「南方型」の2つのグル-プに分かれること。そして日本民族は「北方型」に属し、その源流がバイカル湖畔にあるという成績を得た。本研究では、南西諸島の集団、鹿児島:300人、種子島:199人、屋久島:200人、奄美大島:200人、那覇:348人、宮古:242人、石垣:151人、与那国:136人の血清資料についてGm型を検索し、4つの遺伝子:ag、axg、ab^3st、afb^1b^3の頻度を求め次のような成果を得た。(1)いずれの集団の成績もハ-ディワインバ-グの遺伝法則によく合致する。(2)これら全ての集団は「北方型に特徴的なag遺伝子(0.431-0.533)とab^3st遺伝子(0.220-0.364)」の頻度が高く、むしろ「南方型の特徴づけるafb^1b^3遺伝子(0.040-0.125)」の頻度が低いことから、日本本土の集団と同じく、「北方型蒙古系民族」に属することが確認できた。特に奄美渡島、宮古(上野村)、石垣、与那国の集団の成績は日本本土よりも「より北方型」の値を示し、より古い日本民族の原型をとどめているものと考えられる。(3)台湾タカサゴや台湾人(漢民族)は「北方型」のag遺伝子(頻度0.194、0.299)とab^3st遺伝子(0.002,0.047)の頻度が低く、「南方型」のafb^1b^3遺伝子(0.762、0.643)が高い値を示している。南西諸島の集団はより強い「北方型」を示し、台湾の集団が典型的な「南方型」の際立った相違を示すことから、日本民族が南西諸島から島嶼づたいに遡上したとは考え難いという結論を得た。
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