潜水適応型ウトウCerorhinca monocerataの雛の成長 1)研究目的:潜水適応型鳥類雛の多くは在巣日数が比較的短期であることが知られている(Johnsgard 1987)が、彼らの在巣期の成長過程は、外部形態の伸長を除き不明な点が多い。在巣期の雛の栄養蓄積は、特に筋肉量、脂質蓄積量の多少により、雛の巣立ち後の生残、生活様式に一定の制限を与えると考えられる。本研究ではウトウの雛の成長を分析し、潜水適応種雛の成長の特質を明らかにした。 2)供試材・方法:北海道沿岸島嶼産のウトウ雛計19羽を、Watanuki(1987)の簡便的日齢査定資料から5日齢毎の区分し、孵化から巣立ちまでの外部形態と、そのうち9羽はさらに体内栄養蓄積部位の成長による変化を分析した。外部形態の測定部位は嘴蜂長、〓蹠骨長、翼・尾長、体重、体内測定部位は胸筋(大胸筋・小胸筋)生重・脂質含率、大腿骨及び脛骨筋生重・脂質含率、肝臓生重・脂質含率、体脂質含率、胃内容物、尾腺生重である。脂質抽出には、ホモゲナイズした各2〜5gの生試料をエタノ-ル・ベンゼン(1:1)溶媒で、ソクスレ-抽出器を用い15時間還流し測定した。 3)結果及び考察:孵化時の雛は成鳥の66%の〓蹠骨長、46%の嘴蜂長、14%の翼長、12%の体重を示し、〓蹠骨長の発達が特徴的であった。巣立ちの時の雛(n=1)も〓蹠骨長に限り既に成鳥大の達したが、脚部筋肉の発達を伴っておらず、成鳥の50%前後、その他の部位も翼・尾長で85%前後、嘴蜂長で66%、体重では45%、胸筋は30%台、肝臓生重も27%であった。体脂質含量では成鳥の70%の達していた。ただし、骨部位の成長は個体間差が小さいのが通例であるが、栄養部位の個体間差は大きいと予測されるため、筋肉、脂質に関しては今後巣立ち期のサンプル数を増やす必要がある。若齢期から巣立ちまでの雛の成長傾向を飛翔適応型鳥類(ミズナギドリ科)雛のそれ(Oka 1989)と比べると、特に肝臓生重、体脂質含量・率が抵値である。これは餌の脂質含量がミズナギドリ目より低値で、しかも、一時に飽食させない給餌法に起因するとみられる。巣立ち後の雛の生活は不明であるが、〓蹠骨長以外は全ての部位の完成度が著しく劣っているため、巣立ち後も親の養育継続の可能性が示唆される。
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