日本の古第三系は、おもに非海成ー浅海成の夾炭層群からなり、豊富な植物化石群が含まれている。こうした植物化石群の詳細な層序編年のために、その組成的特徴や構成種の系統分類を中心とした調査研究を行い、以下のような結果を得た。 1.始新世と漸新世の植物群の間に、植物群組成、構成種に著しい差が認められる。 2.かつて中新世と考えられていた、北海道北見の若松沢植物群や九州の相ノ浦植物群は、確かに新第三紀型の現代的組成を示すが、古第三紀要素やカバノキ科などに古型要素を含み、漸新世の一植物群型を示すことが明らかになった。 3.同様な観点から、兵庫県の神戸植物群や山口県宇部層群上部の植物群についての詳細な検討が必要であることが分かってきた。従って、漸新世植物群の知識は根本的に書換えられる。 4.石狩炭田における主要夾炭層の化石群の大部分は始新世と考えられる。始新世末のいわゆるTerminal Eocene Eventが、この夾炭層中に認められるかどうかについては、さらに検討を要し、平成2年度の重点課題とした。 5.夾炭層中の植物化石群は、湿生の植物の多産で特徴づけられ、カバノキ科(とくにハンノキ属)、ニレ科、クルミ科の系統進化が生層序的に重要で、検討を進めている。 6.以上の研究に並行して、旧炭鉱の炭田地質資料の収集に努めている。北海道石狩炭田の含化石ボ-リング・コアなど、貴重な資料が得られた。
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