本年度では光音響分光法を主な実験手段として用いて、ピコ秒パルスレ-ザ-照射により発生する音波や衝撃波の発生機構ならびに伝播の挙動を明らかにするために以下の研究を行った。 1.高速トランスデュ-サ-法による音波の検出 光学的に不透明な試料(半導体や金属など)とトランスデュ-サ-を用い、レ-ザ-光から音響信号への変換効率を測定した。音源の大きさ(レ-ザ-のスポット径)が音波の伝播特性や変換効率などに影響を与える事を見いだした。さらに、表面にレ-ザ-プラズマが形成されると縦波が非常に強く発生した。また横波の検出には、試料の表面状態やトランスデュ-サ-と試料の密着などが実験の再現性に影響を与えた。高速トランスデュ-サ-を用いて薄膜試料の縦波と横波の音速を測定できる可能性を示した。 2.光学的測定法 ガラス(BK7)中を伝播する音波の挙動を光弾性法で研究し、縦波および横波も指向性を持って固体中を伝播する事を明らかにした。 3.透明トランスデュ-サ-の開発 光学的に透明な試料にレ-ザ-光を照射した場合、レ-ザ-光を吸収する従来の圧電トランスデュ-サ-では音波を検出できない。一方、光学的手段では音波の圧力や変換効率などの定量的な測定は非常に困難である。そこで、レ-ザ-光を吸収しない透明な圧電トランスデュ-サ-LiNbO3を新たに開発し、ガラスなどの透明な試料中における光-音波の変換効率の測定を可能とした。次年度ではこのトランスデュ-サ-を中心に用いて研究を推進させる予定である。
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