研究概要 |
前年度においてエレクトロクロミック(EC)膜の作製条件及びそのEC特性を検討した.それに基づいて本年度は固体電解質膜を用いた全固体ECセルの試作を目途とした研究を行った. 1.固体電解質膜の作製ーー固体電解質膜としてはTa_2O_5を用い,高周波スパッタ法で作製した.スパッタガスにはアルゴン・酸素混合ガスを用い,交流導電率の測定によって導電特性を評価した.スパッタガス中の酸素含有量の少ない場合には,得られた膜で化学量論的組成に比して酸素が不足していることによると思われる電子伝導成分の存在が認められた.酸素含有量が20%以上の混合ガスを用いることにより,電子伝導成分の少ない電解質として作用する良好なTa_2O_5膜が得られることが分かった. 2.固体電解質を用いたECセルの作製ーーEC層としてWO_3またはNiOを,電解質層としてTa_2O_5を用いた積層型の固体ECセルを作製した.WO_3膜,NiO膜,Ta_2O_5膜にはそれぞれタングステン,NiO,Ta_2O_5をタ-ゲットとして,アルゴン・酸素混合ガス中の酸素含有量が20%以上の場合に可逆的着消色が認められ,交流導電率の測定結果と一致した.着色効率は液体電解質を用いた場合の約70%であった.Ta_2O_5膜の特性のより一層の改善が望まれる. 3.全固体ECセルの特性の測定ーーWO_3/Ta_2O_5型及びNiO/Ta_2O_5型の2層構造セルのEC特性を測定した.分光感度は液体電解質を用いたセルと同様であった.またこのセルは1000回以上の着消色操作に対して安定であった.ただしWO_3/Ta_2O_5型のセルでは幾分の自己消色が認められた.現在WO_3/Ta_2O_5/NiO型の3層構造セルを試作し,その特性を測定中である.
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