研究概要 |
現在使用されている酸化タングステン(WO_3)を用いたエレクトロクロミック(EC)デバイスは着色効率及びコントラスト比において性能的に不十分である。本研究は酸化タングステン・酸化モリブデン(WO_3/MoO_3)混合膜,酸化ニッケル(NiO)及び固体電解質(Ta_2O_5)膜の使用によりその性能の大幅な改善を目的としている。主要な研究成果を以下に記す。 1.WO_3,NiO,WO_3/MoO_3膜の作製 ーー スパッタ法によりWO_3膜を作製し,膜作製条件の改善により従来の真空蒸着法に比し約20%の着色効率を改善した。スパッタ法によりNiO膜を作製し大きなコントラスト比を持ち安定に動作するアノ-ディックEC膜の作製に成功した。WO_3/MoO_3膜を試作し,WO_3膜に比し約2倍の可視域の着色効率の改善に成功した。 2.液体電解質を用いたECセルの作製 ーー 酸性・中性及びアルカリ性液体電解質を用いてEC特性を測定した。液体電解質を用いた相補型ECセルの構成は困難であることが分かった。 3.ECセルの特性の測定 ーー 着色時の吸収スペクトルを測定し,WO_3とNiOとを用いた相補型ECセルの構成により,可視及び近赤外域で波長特性のほとんどない良好なセルを作製し得ることを明らかにした。 4.固体電解質を用いたECセルの作製 ーー 固体電解質としてTa_2O_5膜をスパッタ法で作製し,電子伝導性の少ない膜を作製する条件を見い出した。これを用いてWO_3及びNiO膜を用いた二層構造のECセルを作製し,安定な動作を確認した。 5.全固体ECセルの作製 ーー WO_3/Ta_2O_5/NiO構造の相補型ECセルを作製し,その特性を測定中である。
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