方位の揃った棒状分子が1次元の周期的構造をもって配位した液晶のスメクティック相が分子間排除体積効果によって安定化され、ネマティック相からスメクティックA相への二次の濃度相転移が起こること、また排除体積効果と分子間分散力ポテンシャルとの総合的効果を考えることにより、ネマティック・スメクティックA相間の温度相転移が二次転移であり、転移温度、秩序度、スメクティック相の層厚さ、層圧縮弾性率などの重要な液晶物性は、第3ビリアル近似により分子論的に良く理解出来ることを示すことが出来た。一方、同じく方位の揃った棒状分子が柱状に集合し、その柱が2次元の周期構造をもって配位したいわゆるコラムナ-相については、これが分子間排除体積効果によって安定化されるかどうか理論的にはまだ証明されていない。しかし、最近に至って、斥力相互作用による排除体積効果が主役を果たしている長い棒状高分子の系において、実験観測が報告されている。そこで本年度においては、同様なモデルと方法を用いてコラムナ-相の安定性を理論的に検討した。先ず第2ビリアル近似により検討したところ濃度が極めて高い最密充填の状態に近くなければ、コラムナ-相は安定にならないという結論が得られた。そこで更に第3ビリアル近似まで理論の精度を上げて検討したところ濃度が体積分率にしておよそ0.48のとき格子定数1.36D(Dは分子の直径)の三角格子状のコラムナ-相がネマティック相に比べて安定になることが結論された。この結論は、ネマティック・コラムナ-相間の1次相転移の可能性を示唆している。今後は、スメクティック相とコラムナ-相を総合的に考慮して液晶相の安定性を検討する必要がある。
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