研究概要 |
希土類イオンを添加したII_aーVI_b族化合物半導体(CaS,SrS)は、青色(SrS:Ce)、赤色(CaS:Eu)、白色(SrS:Ce,Eu)などのEL発光材料材料として注目されつつある。これらの薄膜EL素子では、Ce^<3+>やEu^<2+>などのfーd遷移を示す発光中心が効率のよいEL発光を示す。前年度、伝導電荷光励起スペクトルとフォトルミネッセンス(PL)励起スペクトルを測定し、比較することにより、CaS,SrSにおけるEL励起機構を検討し、発光中心のイオン化が主要な過程になっていることを実験的に明らかにした。本年度は発光中心のイオン化の過程をさらに詳細に検討するとともに、理論的な解析を行った。得られた結果を以下に示す。 1.Eu^<2+>やCe^<3+>を添加したCaS,SrSのエネルギ-・バンド状態を考慮して、電界によって起こる発光中心のイオン化について検討した。Eu^<2+>またはCe^<3+>発光中心をCaS,SrS母体に添加したとき、発光中心の(4f)^n基底状態は禁制帯内に位置し、(4f)^<nー1>(5d)励起状態は伝導帯のX点に近接する。結晶場により分裂した5d電子のより高いエネルギ-状態は伝導帯に、一方より低いエネルギ-状態は禁制帯に存在する。このとき発光中心のdー伝導電子の波動関数と5d励起状態の電子の重なりから強い混合相互作用が存在すると考えられる。このことは電界が高いとき発光中心の5d励起電子が伝導帯に放出されることを意味している。 2.発光中心のイオン化の確率を電界の関数として定式化し数値計算を行った。イオン化の確率は電界に依存しており、1ー2×10^6 V/cm以上の強い電界でEu^<2+>やCe^<3+>発光中心のイオン化が生じると考えられる。 3.薄膜EL素子の伝導電荷について検討した。これらのEL蛍光体では、大多数の電子は発光中心のイオン化により供給される。伝導電荷は1〜2μc/cm^2であり、それは0.6〜1.2×10^<13>個/cm^2の電子に相当する。従って、0.2ー0.4%程度の発光中心がイオン化するものと考えられる。
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