研究概要 |
イットリウム鉄ガ-ネットYIG試料を77Kで光照射したときの透磁率の実部(μ')を時間的に測定。この実験条件下では数秒の緩和時間で照射前のμ'の約40%。また光照射を始めて25秒後消磁をしたがその影響は認められないのでディスアコモデ-ション(Disaccommodalion.DA)とは異なること、光照射を中止してもこの温度に保つ限りでは照射前のμ'には戻らない非可逆性確認。77Kで光照射(2.0×10^3sec)後試料の温度を上昇させたところμ'は単調増加でなく、200±20Kにおいてμ'の凹みを生ずる。光照射後昇温させながら消磁ー測定を繰り返しながらμ'を測定した結果、光を照射しない場合とは異なりこの温度で始めて光照射によるDAを発見。光を照射しないで温度を上昇させると約250K迄透磁率の虚部μ"は100K付近になだらかな低い山を示すがその変化は殆ど無視できる程度であった。しかしながら77Kで光照射した後、温度上昇させると顕著な変化が見られた。その1例で77Kで光照射を1.8×10^3秒行い、その後昇温した時、3ケのピ-クを観測。各ピ-クを低温側からP_I,P_<II>,P_<III>。各ピ-ク温度の周波数依存性からそれぞれの活性エネルギ-Eを求めた。P_I:E=0.095-0.22eV,P_<II>:E=0.50eV,P_<III>:E=0.81eVを得た。77Kから室温まで昇温させると光照射前の状態に戻ることは既に述べた。光照射(3.6×10^3sec)後昇温途中で一旦77Kまで冷却し、約6×10^3sec後光照射しないで再び昇温させながらμ',μ"の挙動を調べた結果μ'の非可逆性がタ-ニング温度で顕著に変化することを見いだした。以上の結果を簡単なモデルで説明した。物理的には低温で酸素欠陥は一種の電子の貯蔵としての働きをしていて、光照射によってこの絶縁系に僅かながら電子を注入してゆく時の磁性の変化の研究に相当する。
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