研究概要 |
高純度イットリウム鉄ガ-ネット(YIG)単結晶にSiをド-ピングすることによって2価の鉄イオンを誘導させた試料で光誘導磁気効果を調べた。ド-ピングとは要するに系の電子濃度を増加させ、フェルミ・エネルギ-を大きくすることであるが、ド-ピングの代わりに光照射によって絶縁系に電子濃度を増加させていったときの磁気的物理的挙動の変化を観測していることに相当する。このような視点のもとに本研究では次の2項目について研究を行い、少なからぬ知見を得た。 1.光誘起磁気効果(光透磁率効果):光を照射前77Kから温度を上昇させると約250K迄透磁率の虚部は100K付近になだらかな低い山を示すがその変化は殆ど無視できる程度であった。しかしながら77Kで光照射した後温度上昇させると顕著な変化が見られた。77Kで光照射を1.8X10^3秒行いその後昇温した時3ケのピ-クを観測した。各ピ-クをP_I,P_<II>,P_<III>と名付けた。これらの各ピ-クの活性エネルギ-EはP_I:E=0.095ー0.22eV,P_<II>:E=0.50eV,P_<III>:E=0.81eVを得た。 2.光誘起磁気効果(光ディスアコモデ-ション,DA効果):130K近傍で生ずることを見いだした。その実験結果とモデルを提唱した。酸素欠陥を光磁気センタ-と考える。これはバンドギャップに深い準位を形成する。照射前、電子波動関数がこの欠陥に局在していて軌道半径は小さい。またこのセンタ-のまわりの原子の平衡位置はこの準位に電子がトラップされているかいないか、さらに電子が何個トラップされているかによって大きく変わる。光誘導局所的構造変化を起こし、これと磁壁との相互作用を透磁率の変化として観測する(非可逆変化)。1つの酸素欠陥は2ケの電子を放出することになる。隣接した酸素イオンをク-ロン力で引き寄せる。逆に酸素欠陥は低温でも移動可能になる。この酸素欠陥の局所的秩序に由来する誘導磁気異方性によってDAが生ずるという解釈を行った。
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