研究概要 |
本研究は永年にわたった炭酸カルシウ系化石や獣骨の電子スピン共鳴スペクトルを測定することにより,その化石の年代値を決めようとすることを目的としている。長野県野尻湖で発掘されたナウマン象歯化石の電子スピン共鳴スペクトルを解析し,ナウマン象歯化石の受けてきた自然環境放射線(特にγ線に注目)を推定した。その結果5つの試料のγ線蓄積線量は約16〜23Gy(1Gy=100rad)程度であることが判明した。又化石の埋もれていた土壌中における天然年間線量率は約(43〜63)×10^<ー5>Gy程度となった。これらのことより各化石の絶対年代値は下記の表に示すような値となり,ほぼ妥当な値であると考えられる。又同一試料について ^<14>C法によっても年代値を推定した。年代値の良く合致するものもあれば,誤差の範囲を超えるものもあり,今後検討する予定である。本手法は又 ^<14>C法の適用できない考古学的試料の絶対年代測定に特に有効であることが判明し,今後他の試料についても適用されると確信している。
|