本研究の目的の骨子は(1)残留応力制御法の確立、(2)製作した試料の残留応力と機械的性質の相関の究明、(3)最適積層条件の決定であるが、本年度の研究範囲は交付申請書に記した実施計画のように、1)試験材料製造装置の設計と製作、2)同装置を用いる製造方法の確立、3)製造した材料の残留応力の直接測定法の考案の3点を実施することにより前記(1)を明らかにすることである。試験材料製造装置を製作し実際に材料を製造したところ装置そのものは良好に作動したが、残留応力の制御上問題があることがわかった。それはプリプレグの引っ張り強さが幅と積層枚数の増加とともに幾何級数的に弱くなるため、本方法ではアルミニュウム層にかかる残留応力は、自由積層状態における88MPaから、0MPaまでが可能な制御範囲であることである。アルミニュウム層に圧縮の残留応力を生ぜしめるためには、幅方向に均等に分布する等しい張力を加えたプリプレグシ-トを多数積層するという複雑な方法をさらに開発しなければならないが、本研究の範囲内では(予算的に)実現できなかった。しかし筆者らの過去の研究結果によると自由積層硬化した積層板に張力を加えることによっても残留応力を制御することは可能である。この方法によればアルミニュウム層に大きい圧縮応力を生じせしめることは理論上可能である。そこでこの方法も含めて次年度における残留応力と材質の関係の検討のための試料製造方法とすることにした。次に本年度の課題のうち残留応力の測定に関しては電解研磨法による方法が確立され、前記の2方法により残留応力制御された材料に適用したところ、残留圧縮応力が200MPaもの大きさになるとCFRPとアルミニュウム層の接着層の応力緩和のため、実際には理論的に計算された応力よりも小さい応力であることがわかった。100MPa以下では理論どおりに制御されていることがわかった。
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