研究概要 |
種々の高分子材料(高密度ポリエチレン(HDPE)、アクリル樹脂(PMMA)、ナイロン(Nylon)、四ふっ化エチレン(PTFE)のフィルム状タ-ゲットを用い高周波スパッタにより、これら高分子の薄膜をガラス及び銅基板上に作製し、SEM観察、表面形状測定による膜質の検討、鋼球スライダによる摩擦試験によって膜の付着性、摩擦損傷の検討を行った。(1)膜の生成速度は電力密度1.27W/cm^2、圧力10^<-2>Torrの条件下、HDPE,PMMA,Nylonでは約4nm/minと同程度だが、PTFEでは約45nm/minと大きく、PTFEの他は耐熱性に劣るためスパッタ時にタ-ゲットの熱的変質が生じることが考えられる。(2)膜の生成速度は低圧(5×10^<-3>Torr)で大きいが、膜面の平滑性が悪化する傾向にある。(3)膜の表面形状は0.4μm厚以下の薄膜では極めて平滑である。膜厚の増加とともに微粒子状物が生長し、これらの集積した表面構造となるが最大あらさ0.4μm以下の平滑表面である。(4)膜の絶縁性は一般に悪く、Nylonの絶縁性が比較的良好で見かけの誘電率はバルクのそれより小さい。(5)ガラス基板上の膜についての摩擦試験による剥離荷重の検討から、膜の付着性はNylonが優れておりPMMAは劣る。(6)荷重一様増加形式の摩擦試験装置を作製し、銅基板上の膜の摩擦試験において摩擦力の変動とAE信号の発生率をモニタし、これらと膜の損傷(剥離・破断)との関係を検討した結果、これら3者の対応関係が明らかとなった。即ち、荷重増加とともに摩擦力の微小変動が生じる(この時、膜の損傷小、AE信号発生率小:初期AE)、さらに高荷重になって摩擦力の大変動が生じる(この時、膜の損傷大、AE信号発生率急増)ようになる。前者は凝着結合や膜の剥離に、後者は膜の剥離・破断に相当する。これらの現象の生じる荷重を決定することにより、膜の力学的強度、付着性を評価することができ、PMMA膜では初期AE発生荷重、AE急増荷重ともPTFE膜のそれよりも低く、力学的強度、付着性が劣るといえる。
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