航空機材料では、疲労強度の評価は不可欠であり、これまでに室温大気中で従来合金との比較のもとに2種類のAlーLi合金の疲労特性について検討を行ってきた.しかし、航空機材料にとっては、大気中の疲労特性のみならず環境中の疲労強度、すなわち腐食疲労強度を評価しておくことも必要である. 本年度は、AlーLi合金2090および8090の3種類の時効材(亜時効材(UA)、ピ-ク時効材(PA)、過時効材(OA))について、海水を想定した3%NaCl水溶液中で疲労試験を行った.腐食ピット、き裂発生、および成長などの詳細な観察を通じ、AlーLi合金の腐食疲労機構を検討するとともに、従来合金と比較して腐食疲労特性について評価した.得られた主な結果は、以下のとおりである. (1) 2090および8090合金とも、3種類の時効材の腐食疲労強度はほぼ同程度であり、また従来合金7075とも同程度である.しかし、2024合金よりは優れている. (2) 腐食環境による疲労強度の低下は、2090合金ではPA材で最も大きく、次いでUA材、OA材であるが、8090合金ではPA材で最も大きく、OA材、UA材の順となる. (3) 腐食ピット寸法の分布は対数正規分布に従い、いずれの合金においても、UA材のピット寸法は他の時効材よりも大きい.また、従来合金と比較すると、ピット寸法はかなり小さい. (4) き裂発生は、2090合金では時効条件にかかわらず、同程度であるが、8090合金ではPA材が最も遅く、次いでOA材、UA材の順である. (5) 疲労き裂成長抵抗は、2090合金ではUA材が最も高く、次いでPA材、OA材であるが、8090合金ではPA材とOA材は同程度であるが、UA材は若干劣っている.
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