1.流体を含む多孔質弾性体の熱応力の基礎理論を確立した。(1)流体を含む多孔質弾性体の力学を熱応力を含むように拡張するに当り、ビオ-らの現象論的理論の拡張による方法と連続体熱力学にもとづくミックススチャ-理論の適用による方法の比較検討を行い、前者の優位性を確認した。(2)この判断にもとづき、クレアリ-の理論の拡張により、流体の流れによる熱の移送をも考慮に入れた流体を含む多孔質弾性体の熱応力の基礎理論を確立した。(3)種々の実際の材料(岩石)の物性定数を用いて、それぞれの材料に対し有効な基礎式の簡易化を行った。 2.確立した基礎式を2〜3の基礎的な問題に適用し、基礎式の特性について検討するとともに強制浸透流による熱応力軽減の可能性について検討した。(1)1次元問題の解析により、基礎式の簡易化とその特性、解析解と数値解(クランク=ニコルソン法)の検討を行った。(2)多孔質岩体への冷水の注入による温度・空げき流体圧・熱応力の過渡的応答について解析し、熱と流体の拡散係数の比の違いによる応答の顕著な違いを明らかにした。(3)多孔質中空円筒の高音流体の内壁への加圧による熱応力の解析を行い、強制浸透流による熱応力の制御・軽減の可能性を示唆した。 3.流体を含む多孔質弾性体の物性定数の測定の準備を行った。(1)ガラス=ビ-ズの焼結による多孔質材試験片の試作を行い、焼結温度・焼結時間等の影響について検討した。(2)試作した焼結ビ-ズの空げき率の測定を行い、有効弾性係数の計算と測定を行った。(3)超音波法による測定システムの組上げを行い、P波・S波の位相速度の測定を開始した。第2P波の検出については、減衰の大きい振動子(特注)が未完成のため、まだ検出に成功していない。
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