本研究では、まず、軸方向に一方向凝固させたIN738LC薄肉円管試験片の引張り・ねじり組合せクリ-プ試験を温度850℃で実施した。次に、単結晶ブロックの引張り・せん断組合せクリ-プおよび一方向凝固薄肉円管の引張り・ねじり組合せクリ-プを結晶すべり理論に基づいて解析し、解析結果を実験結果と比較することによってクリ-プ異方性と活動すべり系との関係を議論した。この結果、最小クリ-プ速度に関して次のような知見が得られた。 1.クリ-プ異方性は、クリ-プ速度の大きさに関しては顕著に観察されたが、クリ-プ速度と応力の非共軸性に関してはそれほど目立たなかった。なお、クリ-プ速度は、引張りクリ-プ試験で最も大きく、θ=30°(すなわちσ=τ)の組合せクリ-プ試験で最も小さかった。 2.{111}<110>八面体すべり系、{111}<112>八面体すべり系および{100}<110>立方体すべり系は、どれも単独では上述のクリ-プ異方性を記述し得なかった。しかし、{111}<112>八面体すべり系と{100}<110>立方体すべり系を組み合わせると、解析結果は実験結果にほぼ一致した。なお本試験では、前者は引張りクリ-プの場合に、一方後者はねじりクリ-プの場合に最も大きなクリ-プ速度を考えた。 3.引張り・ねじり組合せ負荷を受ける一方向凝固薄円管のクリ-プ解析モデルとして、許容速度場と許容応力場の2通りを与えたが、これによって解析結果の定性的傾向は変わらなかった。また、この解析モデルの柱状粒として2種類、3種類および6種類を考えたが、その影響は小さく、2種類の簡単なモデルでかなり精度のよい結晶が得られた。
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