境界要素法においては、特異性に起因する数値積分の発散問題が重大な未解決問題として残されていた。本研究により、通常のポテンシャル問題、弾性問題、あるいはそれらと等価な問題における特異性の課題は完全に解決することができた。また、この解決に伴い必然的に導くことができる、き裂問題の解析法の改善と過剰未知数問題の解析法の改善についても成功の見通しが得られた。以下、成果の概要をまとめる。 1.ポテンシャル(またはこれに相当する量)に関して 1).基礎式である、境界積分方程式の中にポテンシャル量の相対量を直接組み込むことにより、コ-シ-の主値の特異性をキャンセルできること、また、これより低い特異性は変数変換により消失できることを見出した。 2).1)の結果を定常問題、非定常問題の両方に適用し、いずれの場合も成立することを数値検証した。 3).内部の計算の際に現れる、擬特異性の問題も相対量により解決できることを示した。 2.ポテンシャル(またはこれに相当する量)の勾配に関して 4).ポテンシャルの勾配を求める境界積分方程式は相対量を用いた積分方程式から簡単に導かれることを示した。 5).ポテンシャルの勾配を求める積分方程式はコ-シ-の主値よりも強い特異性を有するが、相対量を導入すると特異性が1階キャンセルでき、コ-シ-の主値にまで特異性を落とせることを見出した。 6).コ-シ-の主値積分を数値的に行う方法を境界要素法に適用し、相対量と併用することによりポテンシャル勾配の場合も完全に特異性を消失することに成功した。
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