研究概要 |
本研究はCFRP(炭素繊維強化樹脂複合材)積層板の耐衝撃特性をその構成素材である一方向カ-ボンプリプレグシ-トの積層構成法に着目して改善することを目的としている。本年度は、昨年度に設計・試作した衝撃試験装置を用いて本格的な実験を行なった。まず,積層構成の異なる6種類の試験片を作製した。これらの積層構成は[0゚_6/Q゚_<10>/0゚_6],(Q=15゚,30゚,45゚,60゚,75゚,および90゚)で,その形状は180mm×100mm×2.8mmの矩形積層板である。さて,衝撃試験に先だって,この斜交積層板試験片の圧縮剛性を測定した。測定された圧縮剛性は斜交角Qが大きくなるにつれて急速に低下し,Q=45゚あたりで最も小さくなるが,Qがさらに大きくなると圧縮剛性もわずかに大きくなった。一方,古典積層理論を用いて圧縮剛性を算出したところ,上記測定値は理論値よりも低い値であるが,斜交角に対する圧縮剛性の変化の傾向は良く一致した。ついで,直径5mmと10mmの鋼球をいずれも60m/secの速度で試験片に垂直に衝突させた。この時,試験片の衝撃裏面に貼付したひずみゲ-ジの出力をオシロスコ-プで観察した。衝撃後の各試験片を超音波顕微境を用いて観察した結果,0゚/Q゚およびQ゚/0゚の繊維配向が変化する2つの界面に大きなはく離損傷が見られた。はく離の形状は0゚/Q゚界面ではQ゚方向に長く,Q゚/0゚界面では0゚方向に長く進展し,前者と比べて後者のはく離領域は極めて大きい。 また,斜交角が大きくなるにつれてはく離領域も大きくなる傾向が見られた。このことは斜交角を小さくすることがはく離損傷の軽減に有効であることを示唆している。さらに,試験片断面を電子顕微鏡(SEM)で観察した結果,多くのトランスバ-スクラックが見られ,これより,衝撃点裏面に発生したクラックを起点として上記はく離損傷が発生することが予想された。今後はこれらの観察結果から,有効な耐衝撃積層構成法を提案したいと考えている。
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