従来精密な測定機や割出盤の回転機構には、軸受の軸直角断面がおむすび形状のものがある。真円度測定機として有名なタリロンドにも球面と三点接触の組み合わせが使われている。このような歪円形状の軸受はその振動特性の優れた点(ホワ-リング発生が少なく軸剛性が安定している。)より経験的に多用されているが、理論解析や加工法についての研究は少ない。従来までの筆者の開発したラップ仕上法により軸を任意の歪円形状に仕上げる方法は確立している。昨年度は軸受(穴)を任意の歪円形状に仕上げる方法を考えた。等角多角形型穴用ラップ工具を試作し、5角形と4角形の2種類について実験を行ない、真円度の任意の成分を残して他の成分を減少させることに成功した。さらに三脚ゲ-ジ式ラップ工具を試作し、挟み角α=90°とα=106°の2種類について実験を行ない、α=90°により4角形成分を7.20μmから8.16μmに増加させることができ、α=106°により4角形成分を6.96μmから9.20μmに、さらに7角形成分を6.98μmから9.23μmに増加させることができた。この間拡大率がプラスの成分は順調に減少することが確認できた。 今年度はラップ仕上を行う前の精密円筒研削の研削条件およびその形状精度の測定に着目した。従来からある両円錐センタ支持に代えてボ-ルセンタを用いることにより真円度が向上することを明らかにし、心押力・潤滑油・鋼球保持用ホルダ材質等の最適な研削条件を求めた。さらに研削中に寸法精度・形状精度・表面粗さのインプロセス計測を試みてVブロック法を応用した3点法による真円度測定機を試作して、各測定子間の最適設定角度やそのときの拡大率・求められた真円度の信頼性を明らかにした。さらに各デ-タをパソコンに接続し、実時間で生デ-タ・真円度各成分の大きさ・真円度のグラフ表示ができるようなソフトを開発した。
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